2016年12月27日正午頃(日本では28日午前7時頃)、安倍晋三総理大臣がパールハーバー(真珠湾)におけるスピーチを行いました。
歴史的な演説となる今回の催しは、アメリカ国民にどのように響くのでしょうか・・・?
謝罪は盛り込まれないと言われていますが、どのような表現で平和と同盟強化を訴えるのでしょうか・・・?
以下、安倍首相のスピーチを書き起こしましたのでご紹介します。
安倍総理大臣の真珠湾スピーチ全文
オバマ大統領、ハリス司令官、ご列席の皆さま、そして全ての、アメリカ国民の皆さま。
パールハーバー・・・真珠湾に、今私は、日本国総理大臣として立っています。
耳を澄ますと、寄せては返す、波の音が聞こえてきます。
降り注ぐ陽の、柔らかな光に照らされた、青い、静かな入り江。
私の後ろ、海の上の、白い、アリゾナ・メモリアル・・・。
あの、慰霊の場を、オバマ大統領と共に訪れました。
そこは私に、沈黙を促す場所でした。
亡くなった、軍人たちの名が記されています。
祖国を守る崇高な任務のため、カリフォルニア、ミシガン、ニューヨーク、テキサス、さまざまな地から来て、乗り組んでいた兵士たちが、あの日、爆撃が戦艦アリゾナを二つに切り裂いたとき、紅蓮の炎の中で、死んでいった・・・。
75年が経った今も海底に横たわるアリゾナには、数知れぬ兵士たちが眠っています。
耳を澄まして心を研ぎ澄ますと、風と波の音とともに、兵士たちの声が聞こえてきます。
あの日、日曜の朝の、明るくくつろいだ、弾む会話の声。
自分の未来を、そして夢を語り合う、若い兵士たちの声。
最期の瞬間、愛する人の名を叫ぶ声。
生まれてくる子の、幸せを祈る声。
ひとりひとりの兵士に、その身を案じる母がいて、父がいた。
愛する妻や、恋人がいた。
成長を楽しみにしている、子どもたちがいたでしょう。
それら、全ての思いが断たれてしまった。
その厳粛な事実をかみしめるとき、私は、言葉を失います。
そのみ霊よ、安らかなれ・・・(数秒間、目を閉じて黙とうのジェスチャー)。
思いを込め、私は日本国民を代表して、兵士たちが眠る海に、花を投じました。
オバマ大統領、米国民の皆さん、世界の、さまざまな国の皆さま。私は日本国総理大臣として、この地で命を落とした人々のみ霊に、ここから始まった戦いが奪った、全ての勇者たちの命に、戦争の犠牲となった、数知れぬ、むこ(?)の民の魂に、永劫の、哀悼の誠を捧げます。
戦争の惨禍は、二度と、繰り返してはならない・・・。
私たちは、そう誓いました。
そして戦後、自由で民主的な国をつくり上げ、法の支配を重んじ、ひたすら、不戦の誓いを堅持して参りました。
戦後70年間に及ぶ平和国家としての歩みに、私たち日本人は、静かな誇りを感じながら、この不動の方針を、これからも貫いてまいります。
この場で、戦艦アリゾナに眠る兵士たちに、アメリカ国民の皆さまに、世界の人々に、固い、その決意を、日本国総理大臣として、表明いたします。
昨日私は、カネオヘの海兵隊基地に、一人の日本帝国海軍士官の碑を訪れました。
その人物とは、真珠湾攻撃中に被弾し、母艦に帰るのを諦め、引き返し、戦死した、戦闘機パイロット、飯田房太中佐です。
彼の墜落地点に碑を建てたのは、日本人ではありません。
攻撃を受けた側にいた、米軍の人々です。死者の、勇気をたたえ、石碑を建ててくれた・・・。
碑には、祖国のため命をささげた軍人への敬意を込め、「日本帝国海軍大尉」と当時の階級を刻んであります。
The brave respect the brave.
「勇者は、勇者を敬う」
アンブローズ・ビアスの詩は言います。
戦い合った敵であっても、敬意を表する。
憎しみ合った敵であっても、理解しようとする。
そこにあるのは、アメリカ国民の寛容の心です。
戦争が終わり、日本が、見渡す限りの焼け野原、貧しさのどん底の中で苦しんでいたとき、食べるもの、着るものを惜しみなく送ってくれたのは、米国であり、アメリカ国民でありました。
皆さんが送ってくれたセーターで、ミルクで、日本人は未来へと、命をつなぐことができました。
そして米国は、日本が、戦後再び、国際社会へと復帰する道を開いてくれた。米国のリーダーシップの下、自由世界の一員として、私たちは、平和と繁栄を享受することができました。
敵として熾烈に戦った、私たち日本人に差し伸べられた、こうした皆さんの善意と支援の手、その大いなる寛容の心は、祖父たち、母たちの胸に深く刻まれています。
私たちも、覚えています。
子や、孫たちも語り継ぎ、決して忘れることはないでしょう。
オバマ大統領と共に訪れた、ワシントンのリンカーン・メモリアル。その壁に刻まれた言葉が、私の心に去来します。
「誰に対しても、悪意を抱かず、慈悲の心で向き合う」
「永続する平和を、われわれ全ての間に打ち立て、大切に守る任務をやり遂げる」
エイブラハム・リンカーン大統領の、言葉です。
私は日本国民を代表し、米国が、世界が、日本に示してくれた寛容に、改めて、ここに、心からの感謝を申し上げます。
あの「パールハーバー」から75年。
人類史に残る激しい戦争を戦った日本と米国は、歴史にまれな、深く、強く結ばれた同盟国となりました。
それは、今までにも増して、世界を覆う幾多の困難に、共に立ち向かう同盟です。
明日を開く、「希望の同盟」です。
私たちを結び付けたものは、寛容の心がもたらした、
The power of reconciliation.
「和解の力」です。
私が、ここパールハーバーで、オバマ大統領と共に、世界の人々に対して訴えたいもの。
それは、この、和解の力です。
戦争の惨禍は、いまだに世界から消えない。
憎悪が憎悪を招く連鎖は、なくなろうとしない。
寛容の心、和解の力を、世界は今、今こそ、必要としています。
憎悪を消し去り、共通の価値の下、友情と、信頼を育てた日米は、今、今こそ、寛容の大切さと、和解の力を、世界に向かって訴え続けていく任務を帯びています。
だからこそ、日本と米国の同盟は、「希望の同盟」なのです。
私たちを見守ってくれている入り江は、どこまでも静かです。
パールハーバー・・・真珠の輝きに満ちた、この美しい入り江こそ、寛容と、そして和解の象徴である。
私たち日本人の子どもたち、そしてオバマ大統領、皆さん米国人の子どもたちが、またその子どもたち、孫たちが、そして世界中の人々が、パールハーバーを和解の象徴として記憶し続けてくれることを私は願います。
そのための努力を、私たちはこれからも、惜しみなく続けていく。
オバマ大統領とともに、ここに固く、誓います。
ありがとうございました。
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安倍さん、ちょっと活舌がよろしくないんで、同時通訳がどこまで正確にアメリカ国民やオバマ大統領に伝えられたか心配になってしまいます・・・。
また、真珠湾攻撃の当日の描写は、広島でのオバマ大統領のスピーチを連想させる表現だったように思います。
いずれにせよ、このスピーチが、今後の日米関係とそれを取り巻く各国との関りにとって、より良い作用を及ぼしてくれることを願います。